研ぎ出し

(内山 英雄)


 

概要

  瓢面に多くの色の塗料(カシューが主)を用いて、次々に重ねてぬっていく。10回以上塗り終えたら、耐水ペーパーを用いて表面から研ぎ出していく。瓢箪の表面は細かな凹凸が無数にあるため、一様には削れず、地図に見る等高線のような模様が無数に出てくる。仕上げた瓢箪は『錦瓢箪』の様相を呈し、配色と模様を楽しむ。
                   
材料・用具
1) 塗料:カシュー(各色)、塗料薄め液(カシューシンナー)・・・基本編参照
2) 塗装用具:30mm以下の平刷毛(0.8号)または筆、刷毛や筆を洗う容器
3) 耐水サンドペーパー:粒度(#)180,320,600,1000を各数枚・・・基本編参照
4) 乾燥台(瓢箪スタンド)

  

作業手順

1. 色塗り
 
1) 瓢箪の口に棒を挿して固定する。
2) 何回塗りにするか決める。目安は10回位である。
3) でき上がりを派手にするか、地味にするか決める。(その他 参照)
4) 色の順序を決め、必ずメモして保管しておくことが重要である。研ぎ出しのときの目安となる。
5) カシューを薄め液で適当な濃度に薄める。筆を入れて上げたとき、細い糸を引く程度に。
6) 瓢箪に挿した棒を持って、最初の色を瓢の尻の方から全体に塗る。筆を縦横に走らせながら、均一になるように。厚塗りにならないよう。
7) 以下、1日1回を限度として、次の色を重ねて塗っていく。
2. 研ぎ出し
  最後の色を塗って2〜3日後から、耐水サンドペーパー(以下、ヤスリという)で水を掛けながら研ぐ。このとき、瓢箪の口から水が入ると、塗料が剥げることがあるので要注意。
1) 荒研ぎ
  10回塗りの場合、180#(番)のヤスリで、最初に塗った色(一番下の色)から3番目の色が顔を出す程度を目処に研ぐ。このとき、1-3)に記した色順のメモが無いと困る。
2) 中研ぎ
  320#のヤスリで、全体の色合い(模様)を見ながら研ぐ(ここでは7〜8割の模様調整をする。最も重要な工程である。)
3) 仕上げ研ぎ
  全体の模様の最終調整と、前に使ったヤスリ跡を消して、塗面を鏡面に仕上げるのが目的である。600#のヤスリで、更に全体の色の調整をしながら、中研ぎのヤスリ跡を消していく。このとき、塗装面に光を当て、反射光で確認しながら仕上げていく。
4) 超仕上げ
  一般的には600#または800#で仕上げて終わるが、出展作品とか更によい作品に仕上げようとする場合は、1000#以上の研ぎ出しを行う。
3. 仕上げの塗装−艶出しをする−
  ヤスリで研ぐと表面の艶(ツヤ)が無くなる。艶出しは「ネオクリヤー」という透明のカシューを使う。これは、少し薄めの方がよい。流れないように、塗り残りがないように、薄めに塗るのがコツである。ネオクリヤーは乾きが遅いので、3〜4日は乾燥するとよい。

 

注意・参考

1) 塗る回数は10回前後がよい。最初の3回位は「捨て塗り」である。最初の色まで出そうとすると、瓢の地が出る。また、最後の色は殆ど削り取られてしまう。
2) 筆や刷毛は、1回塗り終わったら、その都度きれいに洗って乾燥しておく。洗う液は灯油やテレピン油でよい。
3) 筆や刷毛の大きさは、瓢の大小による(千成は中筆、巨大瓢は刷毛)
4) 荒・中・仕上げで使うヤスリの荒さは、荒さを表す数字の 200番違い位の順に使っていく。
    (例:180, 200, 320, 600, 800, 1000 各#)
5) 作品の良否を決定するのは配色である。中学生の美術の教科書の中にある『色』の項を参照されたい。図に示す『12色環』があるので参考までに。
    (配色例:黒・朱・緑・青・銀・紺・朱・緑・銀・茶)
6) 市販されているカシュー塗料の色
白,黄,赤,朱赤,朱,小豆色,紅溜,たいしゃ,ぶどう,えび茶,こげ茶,黄褐色,緑,あさぎ,青,紺,黒,銀,透,クリヤー,ネオクリヤー,淡透,濃黄,濃緑の24色である。
7) ペイントまたは水性塗料でも良い。この種の塗料はカシューにはない中間色(原色に白の混ざったやわらかい中間色)があって、趣の違った作品が出来て面白い。


  以上の点を考えに入れて、配色及び塗る順を考えてみる。
  例えば「明るい色、暗い色」の繰り返しで塗ると派手になる。これを色で示せば、赤・黒・青などがそれである。カシューの中に朱色がある。この朱は効果的な色で、私は必ずといってよいほど使っている。朱は赤と橙の中間とみればよい。朱赤というのがあるが、これは赤に近くあまりかんばしくない。

 

その他

◎ 配色の基礎知識は12色環である。
   イ.相対する色は派手になる(例 赤と青緑、 黄と青紫など)
   ロ.隣り合わせの色の組み合わせは地味になる(例 赤と橙、青緑と緑青など)
   ハ.明るい色同志は派手になる(例 赤と黄橙、黄橙と黄)
   ニ.暗い色同志は地味になる(例 青と青紫、青と紫)
                      
 


作品例


 


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