沈金技法

(内山 英雄)


概要

  沈金とは、漆塗りの表面に、刀で文様を彫りつけて、これに摺漆して金箔や金粉を刀痕に押し込む技法であり、彫刻の一技法である。彫られた凹部に金が沈むから沈金と言われる。繊細な線画等の彫刻に向く。 
    

材料・用具

1) 金粉か金箔
2) 刀(沈金用の特殊な刀が入手困難であるから、自作するか彫刻刀で代用する。)
3) カシュー塗料(瓢面の仕上げの色のカシュー、及びネオクリヤー)
4) ラッカースプレー(クリヤー)
5) 耐水サンドペーパー( 800〜1,000 #)
6) 面相筆(先の細い特殊な筆、筆店に相談するとよい)
7) 朱墨
8) 10cm辺のガラス片

    

作業手順


1. 地こしらえ
 
1) 厚手の乾燥した瓢箪を用意する。
2) 瓢箪の表面をヤスリで研ぎ、出来るだけ凹凸部をなくす。
3) 乾いたら、瓢箪の口に棒を挿し、固定する。
4) 地色とするカシュー塗料を5回以上塗る。
5) 耐水ヤスリ 800#で研ぎ、表面を滑らかにする。
6) 更に地色のカシューを5回塗る(多いほうがよい。)
2. 下絵を描く
  面相筆のように先の細い筆で出来るだけ細く、下絵を線描きする(朱墨か、絵の具がよい。)
3. 溝を切る
  下絵をなぞり、刀で溝を切る(細く傷をつける)
4. 溝にカシューを入れる
  瓢面の地色と同じ色のカシューを溝の部分全体に指腹で叩き込む(この段階のカシューの量が大切である。このとき、溝の中がカシューで埋まるようでは、沈金にならない。)
 <要領>
  ・ガラス片の上に若干のカシューを落とす。それを指腹で薄く延ばす。
  ・その上を指腹で軽く叩いて、指腹にカシューを移す。
  ・その指腹で瓢面の溝の部分を叩いて、カシューを移し、よく延ばす。
5. 金を沈める
  カシューが半乾きのうちに、図柄の溝に金粉を入れるか、金箔を貼る。
6. 被膜を作る
  前記5の作業後、3〜4日を経て、完全に乾いたら、透明のラッカースプレー(クリヤー)を瓢面全体に噴霧し、金の安定を図る(一度に厚くかけないで、軽く2〜3回吹き重ねる。)
7. 仕上げの研ぎ
  翌日、1000#の耐水ヤスリで瓢面全体を研ぐ(溝に入った金は低いから残る。その他は研ぎ落とされて図柄が浮き出てくる。)
8. ツヤ出し
  最後に、カシューのネオクリヤーかクリヤーのラッカースプレーを吹きつけて、完成となる。
 
      

参考


1) 金箔の扱い方は、一朝にはマスター出来ない。先ずは、金粉でやってみるとよい(金粉を使ったり、銀粉を使ったりするのも面白い。) 
2) 沈金技法及び金箔の扱いの体験を望む人のために、石川県小松市粟津温泉に、伝統工芸の村「ゆのくにの森」がある。ここでは、 輪島塗の館、金箔の館など、他に8つの館があり、それぞれの館で体験することが出来る。輪島塗の館で沈金の技法を、金箔の館で箔貼りの技法を体験するのがよい。時間は、体験する内 容により異なるが、15分位から30分、60分位まである。料金も、内容により 800〜1,000 円位である。事前に申し込む必要はない。

作品例



 


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